インキュベーターという侵略者

魔法少女まどか☆マギカという作品のトリックスター「きゅぅベェ」について。(以下QB)

この異星生命体がどんなものか、言っていることは本当かを考察してみる。
まずQBという生命体について。
この生命体は当人の発言を引用すると、「感情をほとんど持ち合わせていない」「意識や記憶を共有している」「ほとんど同じ姿の固体が複数いる。」
SF作品においてこの手の生物はいくつか前例がある。
近年ではマクロスフロンティアに登場する超時空生命体「バジュラ」
風の谷のナウシカに登場する「王蟲
この群体生命というものは現実ではハチやアリなどが近い。

証明されたわけではないけれど、こういったコロニーを形成するタイプの昆虫は群れで一つの生き物として機能する。
固体より、群れ全体の存続を優先する。

バジュラなどの例にかんがみると、QBも同様の生命体と考えることができる。
複数固体に同一の記憶と思考を持ち合わせているために、こういった生命体では感情というものが発生しにくい。
同一の記憶、同一の意識下では個々の感情は発生しないからだ。
よって、彼らにとっては人間が個々の生死にこだわる理由が理解できない。

EVAのアヤナミじゃないが「自分が死んでも、同じ記憶を持った代わりがいるから」となるわけである。
この例でいうと、とある魔術の禁書目録の「シスターズ」がより近いシステムとして成立している。
こうなると自身の死に対する恐怖も起こりようが無い。
自分が死んでもバックアップがある、と思えば自身の生死に対する感情の起伏も起こりにくいものだろうから。
こういう生命体が「感情を持っていない」のは無理の無い話になる。

察するに宇宙のどこかにセンターハブか、メインサーバーのような中央母体がいるはずなのだが。

そんなQBたちが「宇宙の熱的死」を回避するためと証した「感情エネルギー変換システム」(以降魔法少女システム)について。

正直、まどかに語っていた内容の半分はハッタリと思っている。
宇宙のエネルギーの減衰を回避するために魔法少女システムを開発したと言っているが
恐らく本当のところはそんなたいした理由ではなく、単純に母星のエネルギー資源が枯渇したというのが理由だろう。
そちらのほうが自然だ。
そうして彼らの文明は物質によるエネルギー転換ではなく、生命体の持つ精神力(感情エネルギー)を熱エネルギーに転換するシステムを開発した。
コレならば、生命が繁殖する限りにはエネルギー不足に悩ませられることも無くなると考えたのかもしれない。
ところが、いざ自分達に使おうとするとその効率が非常に悪いことに気が付いたという。

いくらでも代わりがいるから使いべりも気にしなくていいシステムなのに。
このエネルギー効率をたとえると、人類に適用した場合が水力発電に匹敵するとして、水車小屋程度だったのではないか。
単一記憶と思考ではフラットな感情しか生まれない。個体間の思考の差異があって初めて感情は起伏するのだから。
あわてたであろう彼らが次に取った行動が、宇宙の他生命体を利用すること。
人類が家畜を利用するのと同様の行動をとったわけだ。
人類に悪意を持っていない、というのは本当だろう。家畜に対して悪意を持って接する畜産業者などいない。
QBたちにとっては「おいしく育てよ」と愛情すらこもっているかもしれない。

有史以前からの人類への関与をうそぶくQBだけど、これも大げさに言っていると思う。
人類がある程度の文明レベルにならないと、それこそエネルギー源の「感情」の起伏の増減は望めないだろうからだ。
人類にかかわり始めたのは有史以来、と考えられる。
まどかに語った、QB達が地球に来なければ今でも洞穴に裸ですんでいたんじゃないか、との言はまどかを追い込む方便であったと思う。

外宇宙を行き来するQBにとっては人類の存亡など、ミツバチの巣から蜜を搾り取るのと同じ程度にしか考えていないのだろうな。
搾り取り終わったら廃棄して次の星を探せばいい。
まったくもって、史上最悪の侵略者だったのではないか。